ナチスドイツが第二次世界大戦中に使用した暗号機「Enigma(エニグマ)」はコンピュータ(計算機)ではなかったが、
それで生成される暗号は非常に進んだものであったことから、暗号を解読するためには専用の解読機を開発する必要があった。
米CNETがその仕組みに迫った。
タイプライターのようにも見えるその黒い金属の機械は木製の箱に収まっていた。
それは古道具屋に並ぶへんてこな品のようにも見えた。しかし、木箱に彫り込まれた黒い楕円形のロゴが、
それが単なる古道具ではないことを示していた。
「Enigma」とそのロゴには書かれていた。
この機械がナチスドイツの使っていた暗号機であることをそのロゴが示していた。
Enigmaは、第二次世界大戦中にドイツ軍が無線を使ってやり取りするメッセージを暗号化するために使われていた。
この暗号機は当時最先端の装置で、世界で最も強力な暗号鍵を生成していた。
この暗号機のおかげで、ドイツの潜水艦Uボートは連合国側の商船を攻撃するのに必要な情報を互いにやりとりすることができた。
Uボートによる攻撃は大戦中を通じて英国に壊滅的な打撃を与え、数万人の生命を奪い、
そして北米からの物資や兵員を運ぶ重要な補給ルートを遮断した。
この暗号機が持つ力に促される形で、連合国側では暗号を破ってドイツ側のメッセージを解読するための取り組みが始まった。
この取り組みでは、複数の機械が使われ、また機密保持を誓った数学者らの力も必要とされた。
さらに海上での命知らずの行為が行われることもあった。
この機械は計算機ですらなかった。Enigmaの専門家であるMark Baldwin氏は先ごろ、
CBS Interactive(米CNETの親会社)で働く大勢の従業員の前でこの機械をデモしてみせたが、
そのなかで同氏は「(Enigmaは)ある文字を別の文字に置き換えるだけ」と説明していた。
Enigmaのキーボードには余計なものはなく、キーのどれかを押すと、
すぐ後ろのランプボード(表示盤)に並んだ文字のいずれかでライトが点灯する。
ユーザーはメッセージをキーボードに打ち込み、ランプボード上で順番に点灯する文字列を書き留める。
この暗号化されたメッセージを、モールス信号に置き換えて無線で打電する。
このやり方なら、ユーザーは安心してメッセージをやりとりできる。
まったく同じに設定した別のEnigmaを使える人間にしかメッセージは解読できないと分かっているからだ。
Enigmaの暗号機を見ただけでは、これが当時世界で最も優秀な技術を持つ専門家たちを困惑させていたというのは信じがたい。
だが当時、例えば英国のブレッチリーパーク(Bletchley Park)のような拠点では、Enigmaの暗号解読方法を見つけるために、
そうした専門家たちによる極秘の取り組みが何年にもわたって続けられていた。
「オーク材のケースに入ったこの機械は、どちらかというと古風なものに見えるだろう?」とBaldwin氏は言った。
実際にEnigmaの歴史は第二次世界大戦よりも前までさかのぼる。今からちょうど100年前、
Arthur Scherbiusというドイツ人の発明家がEnigmaの暗号機に関する特許を取得した。
電信経由でやりとりするメッセージの中身を隠せるように設計したこの機械を、
Scherbiusは企業やその他の暗号化を必要としそうな人たちに売りつけようとした。
Scherbiusは1929年に事故死するまでこの試みを続けたが、結局さほど大きな成功には至らなかった。
そしてScherbiusの死後、「彼の会社はドイツ政府に飲み込まれた」とBaldwin氏は述べた。
ドイツが進めようとしていた再軍備の動きが(それを禁じた)ベルサイユ条約に違反する可能性があったことから、
同国政府ではそれを隠しておくのに役立つ技術を必要としていたためだった。
画像:Mark Baldwin氏による暗号生成のデモ。文字が別の文字に置き換えられる。
画像:ある特定の暗号に対して、天文学的な数の解法が考えられる。
画像:英国のブレッチリーパークで、暗号解読の拠点となった施設。
cnet_japan
https://japan.cnet.com/article/35115908/
続く)
引用元: http://egg.5ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1521602883/
続き)>>1
■単純な機械から生み出される複雑な可能性
Enigmaの機能に関するBaldwin氏の控えめな説明にだまされてはいけない。
デモの場に現れた同氏のオレンジ色のネクタイには、Enigmaの仕組みを説明する回路図がプリントされていたが、
それを見てもEnigmaの仕組みの複雑さは推測できた。この機械は内部の設定に基づいて暗号を生成するが、
その解法はとてつもない数が考えられる。解法の数は、全部書き出すと1パラグラフくらいの長さになるはずだが、
だいたい「3.3掛ける10の114乗(3.3 x 10^114)」になるという。
この数は、観察可能な宇宙のなかに存在する原子の総数(推定値)よりもさらに多いとBaldwin氏は指摘した。
Ralph Simpson氏という熱心なEnigmaマニアは昨年、筆者に次のように語っていた。
もし10万台のEnigmaの機械をつくって配り、受け取った人たちがそれぞれ1日24時間、
週7日間休みなく働いて新しい設定を1秒ごとにテストしたとしたら、
機械を使わずに「生成される暗号を解読するには、宇宙の歴史の2倍の長さの時間が必要だろう」。
また、ナチスドイツがEnigmaの設定を1日に1度変更していたと、Baldwin氏は説明した。
さらに、ドイツ軍では部隊ごとに独自の設定を使っていたため、結果的に毎日約30通りの暗号が作り出されることになった。
暗号の解読方法を見つけ出そうとする人間にとって、
これは「ブレッチリーパークでEnigmaの暗号解読方法がいったん見つかれば、
あとはどこでも暗号化されたメッセージを解読できる」とはいかないことを意味したとBaldwin氏は述べた。
「それは大戦中を通じて夜ごとに繰り返される戦いだった」(同氏)。
Enigmaはそんな膨大な数の組み合わせの可能性を、基本的には3つのローターとプラグボードだけで実現している。
その仕組みは具体的には次のようなものだ。例えば、キーボードで「P」のキーを叩くと対応する電気信号が生じ、
それぞれ26本のワイヤーが仕込まれている3枚のローターを経由してランプボードまで流れる。
この時ランプボード側で点灯するのは「J」という文字かもしれない。そしてもう一度「P」のキーを叩くと、
一番目のローターが回転して、配線が組み替わり、電気の流れる経路が変わるため、
今度は同じ「P」のキーを叩いても、ランプボードで点灯するのは「F」のような別の文字になる。
それぞれ回転するローターが3つあるため、例えばユーザーが繰り返し「P」のキーを叩いた場合、
Enigmaが生成するランダムな文字列は1万9500キーストローク以上にならないと繰り返さないものになる。
そして1941年にドイツ海軍がUボート用のEngimaに4つめのローターを加えたことで、
ランダムな文字列の長さは約45万7000キーストロークに増加した。
そして、オペレーターから見てキーボードの手前にあるのがプラグボードだ。
このプラグボードのおかげでEnigmaのランダムさがさらに増しているが、
これは元々ドイツ軍の兵站に関わる問題に対処するために考えられたものだった。
Enigmaでは理論上403セプティリオン(septillion、10の24乗)の設定が可能だが、
実際には1枚のローターは8通りの設定のうちのどれかしか使えないように配線されている。
そして、戦場で3つのローターの組み合わせを変更するというのは、
ドイツ軍が将校や兵士に要求できないほど大変な作業だったとBaldwin氏は説明した。
このプラグボードのおかげで特定の文字に対するローターのアウトプットを変更することができ、
外側から(ローター自体には触れずに)その組み合わせを変えることが可能になった。
cnet_japan
https://japan.cnet.com/article/35115908/2/
続く)
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■暗号の解読方法を見つける
これほど複雑な暗号機の解読方法をコンピュータを使わずに見つけ出すために、ポーランドや英国、
それに米国の数学者らは、人手を使うよりもはるかに高速にEnigmaの仕組みをシミュレートし、
考えられ得る解法を調べるための機械をそれぞれ独自に考案することになった。
「Bombe」と呼ばれるこれらの機械は、まず英国のブレッチリーパークで開発されたが、
これはEnigmaの暗号解読のためにポーランドが先に開発していた「Bomba」を元にしたものだった。
そして後に、米国オハイオ州のデイトンにあったある施設で、より高速かつ強力なBombeが開発された。
連合国側は、何度かの中断やつまずきはあったものの、
Enigmaの暗号解読を狙った取り組みを続け、結果的にその解読に成功した。
ドイツ側ではEnigmaの暗号が破られる可能性は想定していなかった。
おそらく、Enigmaを使って生成した特定の暗号に対して考えられる解法の数の多さに多大な信頼を置いていたためだろう。
「彼らはこの膨大な数のせいで、暗号解読の可能性を見逃していた」とBaldwin氏は述べた。
Alan Turingは、ブレッチリーパークにおけるEnigma暗号解読の取り組みに貢献した人々のなかで
最もよく知られるようになった人物だ。Turingは英国が開発したBombeの中心的な設計者のひとりであった。
エキセントリックな考えを持ち、高いスキルを持つ数学者であったTuringは、
後にマンチェスター大学でその才能を初期のコンピュータ開発に振り向けることになった。
TuringがEnigmaの暗号解読方法を見つける取り組みに関わっていたことはその死後まで公にされなかったが、
これはブレッチリーパークでの取り組みに関与したほかのすべての人にも当てはまる。
そして、解読者が作成した書類はすべて処分された。
近年になって、解読者の手になるメモが仕事場として使っていた兵舎の内部から見つかり、
それによって暗号解読に至るプロセスが明らかになった。
このメモのなかにはEnigmaの暗号機の設定を解明するために使われた
「バンバリーシート(Banbury Sheet)」と呼ばれるものも含まれている。
英国と米国がEnigmaで暗号化されたメッセージを繰り返し解読していたことは、
1970年代になるまであまり知られていなかった。
F. W. Winterbotham氏著の「ウルトラ・シークレット」が刊行されたのは1974年のことだったが、
これはBombeの存在を明かした英語で書かれた最初の本だった。
The New York Timesは当時、同書をとり上げた批評記事のなかで、
「この書籍で明らかにされているのは、第二次世界大戦に関して、原子爆弾(の開発)に次ぐ最も重大な秘密だ」と述べていた。
そして同書刊行の翌年には、英国政府がこのプロジェクトに関する情報を公開し始めたとBaldwin氏は述べた。
■それでもコンピュータにあらず
Enigmaのプレゼンテーションを終えたBaldwin氏に対して、筆者はさらに質問をぶつけてみた。
その質問とは、Baldwin氏が、EnigmaもBombeも決してコンピュータではなく、
コンピュータの先駆けとなる代物ですらなかったとして譲らない理由についてであった。
Baldwin氏がEnigmaやBombeの能力を大いに評価していることは明らかだったが、それでも同氏は、
Enigmaは単一の目的のために作られた、電気機械式の装置だっととの自説を繰り返した。
そして、Bombeは確かに暗号解読のための画期的な解決手段であったが、
それでも単に複数台のEnigmaを同時に稼働させていたにすぎないと言う。
「Bombeは2+2の足し算さえできない」とBaldwin氏は答えた。
そうだとしたら、そんなものがコンピュータである理由はない。
cnet_japan
https://japan.cnet.com/article/35115908/3/
>>3
なげえよ。
暗号解読と言うが、 本当は大部分は、スパイや垂れ込みだろ。
スパイや垂れ込みの命を守るために
英米の頭脳を誇る為に、
暗号解読と言ってるだけだろ。
アラン・チューリングの映画はとてもよくできてた
お前らのスマホの方が高性能
>>4俺も映画の話で。
ドリーム って初期のマーキュリー計画の頃のNASAのお話を拾った映画があったけど、
既に当時、フォートランというコンピュータ言語で駆動するタイプの汎用機をNASAは所有
していた。けど、当初はそこに物理計算式を入れて必要な計算を考える人が少なかった。
それでそれまでパートとして一部分の仕様しか渡していなかった有色人種の計算職を、
NASAの常勤にしてそれでやっとロシアに追いつき、月まで行くまでの軌道や必要な機材
のスペックを検討することができるようになったそうだ。
映画では、有色人種差別に焦点を当ててるけど、NASAが有色人種に限られた職権しか
与えないまま、末端の作業を委ねてた体制から、ロシアに有人飛行を先んじられた経緯
とかもあって、実際にモノ作ること、設計すること、テストすることなどの経緯が描いて
あって、理系のお話としても面白かったよ。
アポロ11号はコンピューターというより、専用回路と手動操作なので。
あの当時は搭載機器ではなく軌道計算や機器設計にコンピュータが使われていたんだよ。
時代がもう少し遡るけど「ドリーム」って映画に結構細かく当時の計算職のやってたことが描写されてるよ。
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
という映画を観て
アラン・チューリングはコンピュータの元祖を作った――とおもってたが
そうではない――ということか
>>5
暗号解読のように、タネと方程式を与えれば順々に計算をしていく機械の構想を考えた。
ノイマンも順々の作業をしていくコンピュータを構想したけれど、実際にお仕事で毎日の
ように同じような文字の当てはめをやってたチューリングの方が具体的な構想を持って
いたとされる。
ノイマンは計算機の構想と、既にあったオルゴールやパンチカード(ジャガード織機のような)
の実装を組み合わせて順序計算のコンピュータを設計した。
戦争がなければ、チューリングの構想も早々に大々的に発表されて、これこそ元祖とか
ストレートに言われてたかもしれないね。
エニグマ暗号と日本陸軍の暗号はどちらが優秀だったんだろう。
日本海軍の「暗号書D」は数ヶ月毎に更新されたが、数式パターンが同じだった為に、1度数式パターンを見破られると米軍に全て筒抜けだった。
一方で、日本陸軍の暗号は「ワンタイムパット方式」と呼ばれる使い捨ての暗号書を使用してランダムな数式暗号を常に更新していた。
その為、たびたび日本陸軍が撤退時に遺棄した暗号書が連合軍に捕獲されたときのみ解読され、暗号書が更新されると再び解読不能になり、終戦まで解読されることはなかった。
ランダムな数式パターンを使用し、常に更新されるという点ではエニグマ暗号も日本陸軍の暗号方式は同じだが、暗号書を更新するたびに配布していた日本陸軍よりは
エニグマ暗号機を使用したドイツ軍の方が効率的だし、部隊ごとに暗号パターンを変更していた点から見ても機密保持が有効だっだろうな。
>>8
日本が使ってた和文なんとか式暗号機は
エニグマの改良型で、ローター数とか増やしてるから
エニグマより解読大変
んでも、アメリカにはチューリングと並ぶ信号処理の大家、フォンノイマンがいて(ry
使ってる日本軍ですら解読が大変だったらしいね
堀栄三情報参謀の本によるとやたらと同音異義語が多いせいで
戦闘が先頭とか意味不明な解読文が頻繁に上がってきたらしい
そのせいで日本語では戦争はできんとかまで言っていたような
>>33
97式欧文印字機については
アメリカ軍も完全な形での接収が出来なかったと言われるしねぇ
ドイツのゲハイムシュライバー機(エニグマ改)同等以上らしいってのが断片的に解ってるだけ…
大和田通信所とか仁村海軍少将のトコとかで何やってたのかも
あまり公開されてないからなぁ
ま、そこら辺はイギリスだってコロッサス公開も最近っちゃ最近だし
あまり変わらないけど