北朝鮮と韓国、すでに上下関係にある

米朝による駆け引きの場となった平昌オリンピック。娘のイバンカ氏が閉会式出席のため韓国の空港に到着した直後、トランプ大統領は北朝鮮に対する新たな制裁案を発表。「私は今日、北朝鮮への史上最大の制裁に着手する。北朝鮮の資金源や燃料をさらに遮断する」と述べた。

CNNによれば、開会式でペンス副大統領よりも金与正氏の方に注目が集まったことから、アメリカは対抗の意味を込めてイバンカ氏を送り込んだのだという。文在寅大統領もこれに応え、金与正氏よりも格上の首脳級の接待でもてなした。しかし、その晩餐会で米韓の思惑の相違が浮き彫りになった。文大統領が「トランプ大統領が南北対話を強く支持してくれたおかげで、朝鮮半島の緊張が緩和している」と述べたのに対し、イバンカ氏は「私は朝鮮半島の非核化のため、北朝鮮に最大限圧力をかける方針を再確認するために来た」と述べた。

一方、北朝鮮が閉会式に送り込んだのは“北の軍師“と呼ばれる朝鮮労働党の金英哲副委員長だ。金正恩氏に軍事を指導した家庭教師であり、工作機関のトップとして延坪島砲撃事件や哨戒艦沈没事件を主導したとして、制裁対象にもなっている人物だ。しかし文大統領は「事件の主犯と特定できない」として入国を特別に許可。朝鮮日報は「哨戒艦を爆沈させた主犯を韓国政府が総出で擁護している」と批判した。文大統領は閉会式でイバンカ氏のすぐ後ろに金英哲氏の席を設け、“至近距離“を演出したものの、今回も米朝の接触は実現しなかったようだ。

韓国側の大バッシングの中、金英哲氏と会談を行った文大統領。「平昌オリンピックが平和オリンピックになった。南北関係はこれからも広範囲に進展させなければならない」と指摘、金英哲氏も「金正恩委員長も同じ遺志を持っている」と応じたという。さらに両者は「南北関係改善と朝鮮半島問題の本質的解決のために米朝対話が早急に行われるべきだ」（文大統領）、「アメリカと対話する十分な用意がある」（金英哲氏）と、米朝対話の実現にも言及したとされている。

3日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ！』に出演した元駐日韓国大使館公使の洪ヒョン氏は金英哲氏について「軍師だとは思わない。元々は政治将校で、30年近く南北の“揺さぶり“の第一線で活躍した。彼と接触したことのある人物に、性格は非常に荒いが、権力者には媚びるタイプだと聞いた。副委員長という肩書がわかりづらいが、朝鮮労働党政務局には金正恩委員長の命令を受けて全ての仕事を司る9人の副委員長がおり、彼はいわゆるテロ工作の担当だ。彼には統一戦線部長や国務委員など、他にも色々な肩書を持っている」と話す。

その上で、洪氏は韓国が金氏を入国させたことを厳しく批判する。「韓国に屈辱を与え、“始まる前に負けた“ということを印象づけるために送り込んだので、韓国は拒否しなければいけなかった。専門家たちは今の平壌と文在寅は上下関係にあると考えている。最初から平昌オリンピックは南北の連邦制にするための環境作りだった。アメリカは一応、韓国の求めに応じて、開会式に副大統領を送ったが、イバンカさんを送りたくて送ったわけではない。文在寅が何とかアメリカの要人を北側の要人を会わせようと、必死に工作した結果だ」との見方を示した。

4日、韓国は文大統領の特使を平壌に派遣することを決定した。南北首脳会談は実現するのか、米韓合同軍事演習は実施されるのか、注目される。（AbemaTV／『みのもんたのよるバズ！』より）

引用:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180305-00010003-abema-kr